火星は地球型惑星に分類される、いわゆる硬い岩石の地表を持った惑星である。火星が赤く見えるのは、その表面に地球のような水の海が無く、地表に酸化鉄(赤さび)が大量に含まれているためである。直径は地球の半分ほどで、質量は地球の約 1/10 に過ぎないため、火星の地表での重力の強さは地球の40%ほどしかない。火星の表面積は、地球の表面積の約 1/4であるが、これは地球の陸地の面積(約1.5億km2)とほぼ等しい。火星の自転周期は地球のそれと非常に近く、火星の1日(1火星太陽日、1 sol)は、24時間39分35.244秒である。また地球と同じように太陽に対して自転軸を傾けたまま公転しているので、火星には季節が存在する。
火星の大気は希薄で、地表での大気圧は約750Paと地球での平均値の約0.75%に過ぎない。逆に大気の厚さを示すスケールハイトは約11kmに達し、およそ6kmである地球よりも高い。これらはいずれも、火星の重力が地球よりも弱いことに起因している。大気が希薄なために熱を保持する作用が弱く、表面温度は最高でも約20℃である。大気の組成は二酸化炭素が95%、窒素が3%、アルゴンが1.6%で、他に酸素や水蒸気などの微量成分を含む。ただし、火星の大気の上層部は太陽風の影響を受けて宇宙空間へと流出していることが、ソビエト連邦の無人火星探査機のフォボス2号によって観測されている。したがって上記の火星の大気圧や大気組成は、長い目で見ると変化している可能性、そして今後も変化してゆく可能性が指摘されている。
2003年に地球からの望遠鏡による観測で大気にメタンが含まれている可能性が浮上し、2004年3月のマーズ・エクスプレス探査機の調査による大気の解析でメタンの存在が確認された。現在観測されているメタンの量の平均値は体積比で約11±4 ppb である。
火星の環境下では不安定な気体であるメタンの存在は、火星にメタンのガス源が存在する(または、少なくとも最近100年以内には存在していた)という興味深い事実を示唆している。ガスの生成源としては火山活動や彗星の衝突、あるいはメタン菌のような微生物の形で生命が存在するなどの可能性が考えられているが、いずれも未確認である。地球の海では、生物によってメタンが生成される際には同時にエタンも生成される傾向がある。一方、火山活動から放出されるメタンには二酸化硫黄が付随する。メタンは火星表面の所々に局所的に存在しているように見える事から、発生したメタンは大気中に一様に分布するよりも短時間で分解されていることがうかがえる。それゆえ、おそらく持続的に大気中に放出されているとも推測される。発生源に関する仮説でどれが最も有力かを推定するために、メタンと同時に放出される別の気体を検出する計画も現在進められている。
火星大気には大きく変化する面もある。冬の数ヶ月間に極地方で夜が続くと、地表は非常に低温になり、大気全体の25%もが凝固して厚さ数メートルに達する二酸化炭素の氷(ドライアイス)の層をつくる。やがて、極に再び日光が当たる季節になると二酸化炭素の氷は昇華して、極地方に吹き付ける400km/hに達する強い風が発生する。これらの季節的活動によって大量の塵や水蒸気が運ばれ、地球と似た霜や大規模な巻雲が生じる。このような水の氷からなる雲の写真が2004年にオポチュニティによって撮影されている(撮影画像)。また、南極で二酸化炭素が爆発的に噴出した跡がマーズ・オデッセイによって撮影されている[2]。
火星は短い時間尺度では温暖化していることを示唆する証拠も発見されている[3]。しかし21世紀初頭の火星は1970年代よりは寒冷である[4]。